弟「いや、俺に言われても。父さんと母さんに言いなよ」
姉「お父さんとお母さんに言っても、どうにもなんないじゃん…」
弟「もしかしたら生き別れの兄とかがいるかもしれない」
姉「そんなマンガじゃないんだし」
弟「いやいや父さんが独身のころ二股かけてて……いや、あのおっさんにそんな甲斐性はないよね」
姉「でしょ…あーお兄ちゃんがほしぃーお兄ちゃんおにいちゃんおにーちゃんー」
姉「…やっぱいないって、生き別れの兄」
弟「いないかぁー」
姉「うぅ…おにいちゃん…」
弟「よし、第2案」
姉「なになに?」
弟「昔の人は言っていた、パンがなければ小麦を食えと! お兄ちゃんがいなければ…」
姉「いなければ?」
弟「お兄ちゃんを作ればいいじゃない!」
姉「それだっ!」
弟「しかも、今日はホームセンターで造形用粘土が安売りされてるってチラシがっ!!」
姉「ちょっとホムセン行ってくるっ!!」
姉「こ、こう…かな?」
弟「いや、そこはもうちょっと削った方がいいんじゃね?」
姉「ええと、こんな感じ?」
弟「…削りすぎだろ」
姉「だ、だって、あんたが削れって言ったんじゃんっ」
弟「ちなみに…なに作ってんの?」
姉「え? ウサギさんだよ? 見てわかんない? ほらこのパッケージのウサギさん見てよ! めちゃかわいい!」
弟「いや、わかるよ? ウサギだということはかろうじて」
姉「…かろうじてって、さっき、あんたが耳削れって言ったから! 見てなさい、お姉ちゃんがめちゃかわいいウサギさん作っちゃうから!」
弟「いや、だから、うさぎじゃなくて…お兄ちゃんは?」
姉「………あ」
姉「そもそも、お兄ちゃんは粘土こねて作るもんじゃないと思う」
弟「じゃあ、なにで作るのさ? 言っとくけど木材加工も金属加工も敷居高いよ?」
姉「まず、その発想を捨てよう」
弟「……まさか、錬成!? でも錬金術の基本は等価交か………ま、まさか!?」
姉「そう、あんたを…」
弟「俺を犠牲にして…」
姉「そうよ…なにかを得るためにはなにかを犠牲にする必要があるの」
弟「そ、そこまで…そこまでして兄が欲しいのかっ!」
姉「………んー、よく考えたら、あんたを犠牲にするならいらないかなぁ」
弟「く、くそぉっ…しかし人体錬成は禁忌のワザっ…姉ちゃんも手や足の一本くらい持っていかれるぞ!」
姉「ああ、うん。もうそれいいから」
弟「…真理の扉の向こう側か」
姉「だから、それ終わりだって」
姉「現実的なところで行ってみよう」
弟「……くっ……み、右腕が、持っていかれたぁっ」
姉「うん、その話題終わってるから。あんた外でもそういうオタク臭まき散らしてないでしょうね?」
弟「失礼な…俺ほど完璧な隠れオタもそういない」
姉「明日、その左手にマジックで描いてある模様消してから学校いきなよ?」
弟「…こ、刻印が…うずきだしやがった……近いな、奴らが」
姉「そういうのもいいから」
弟「年上の養子が来る…という案はどうだろう?」
姉「むり」
弟「無理かな? 現実的だと思うけど」
姉「むりむり。初対面の人に『お兄ちゃぁん』とか言って甘えたりできない…私、人見知りするし」
弟「ネクラだし。ウチベンケーだしなぁ…コミュ力もないし…無い内定だし…」
姉「あれ、なんだろ? 今、弟の口がナチュラルにひどいことを言った気がするぞー? お姉ちゃん泣いちゃうぞー?」
弟「どうだった?」
姉「ダメだった。うちにお兄ちゃんを養子にもらうゆとりは無いらしい…」
弟「そっか」
姉「お母さんに『自分の分の食費を稼げるようになってから言え』と言われた…就活は関係ないじゃんよぅ…」
弟「無い内定だからなぁ…」
姉「ひどいよね…ちょっと泣きそう」
弟「うん、姉ちゃん、頑張ってないわけじゃないもんな(頑張りが足りてないだけで)。わかってるよ」
姉「うぅ…やさしぃ……なんかカッコの中が気になるけど…」
弟「よしよし」
姉「……お兄ちゃぁんっ」
弟「はっはっは、俺はお兄ちゃんじゃないぞ」
姉「ちっ」
姉「いいもん…就職できなくても」
弟「良くないだろ」
姉「だいじょうぶ!…私には夢がある! アイハブアドリーム!」
弟「そうなんだ。初耳」
姉「お嫁さん! かわいいお嫁さん! ブライダルフェアー!」
弟「まぁ、そんなオチだろうとは思ってた」
姉「オチじゃないし!」
弟「いや、相手いないくせに『お嫁さん』とか歳を考えろっていうか」
姉「あ、あんただって、小さいとき『大きくなったら、おねーちゃんのおヨメさんになるー』って言ってたくせに!」
弟「………い、言ってない」
姉「いや、言ってた! 頑なに主張してた! こっちが『おヨメさんじゃないよね? おムコさんだよね?』って訂正しても! しかも小学校に3年生くらいまで!」
弟「そ、そんなことより、日本経済のこれからについて話し合わないかい?」
姉「うん、円高が結構やっちゃってるけど、これまた為替介入するのかなぁ」
弟「ごめん、姉ちゃん…もっとソフトな話題がいいな、やっぱり」
姉「お兄ちゃんっ♪」
弟「私は、お兄ちゃんではありません。それはトムです」
姉「…ノリが悪い」
弟「どうしても俺のことをお兄ちゃんと呼びたければ…」
姉「呼びたければ?」
弟「スカートの端をつまみ上げつつ、パンツをさらし『お兄ちゃんのスペルマを私の卵子にぶっかけてぇっ』と言ってもらおうか!」
姉「………」
弟「フハハハハ! 言えまい! 言えないだろう! 所詮、貴様のお兄ちゃんに対する情熱はその程度のものだ!」
姉「えと…お兄ちゃんのスペルマ私の卵子にぶっかけてぇっ! お兄ちゃんの赤ちゃん汁で受精させてぇっ!」
弟「………」
姉「フハハハハ! 参ったか! 私のお兄ちゃんへの情熱を甘く見ないでもらいたい!」
弟「…いや、パンツがしましまじゃないとか、マジありえないし……なにそのババくさい色。失格」
姉「しまっ!? ダメだし!? し、仕方ないじゃん、あんたに見せる予定とかなかったんだし!」
弟「妹キャラは、しまぱんって決まってるだろ…」
姉「…だいたい、しまぱん?とか持ってないし」
弟「仕方ない…今度俺のしまぱんを貸してやろう」
姉「いい。いらない」
姉「ねー…プリン食べたくない?」
弟「ん? あー…甘いもん食べたいかも…」
姉「そ。 じゃ、買ってきて」
弟「…なんで俺が。姉ちゃん、車あるじゃん。歩くとコンビニまでけっこうかかんじゃん」
姉「私、お姉ちゃん。 あんた、弟」
弟「………」
姉「わかった? はい、お金。ミルクプリンはイヤ。焼プリンも不許可。スタンダードなやつのみ。ソーダ味とか買ってきたら泣く」
弟「……姉ちゃん」
姉「なに? おつりはあげるよん?」
弟「いや、そもそも百円じゃ足らないし…今日だけなら、お兄ちゃんになってやらないこともないけど?」
姉「いいの、やったぁ! お兄ちゃん!」
弟「ははは、なんだいマイシスター? そうかそうか、お兄ちゃんの代わりにコンビニに行ってくれるか! お兄ちゃんは兄想いの良い妹を持ってしあわせだなぁ!」
弟「…姉ちゃん」
姉「ちがう。今は、あんたがお兄ちゃん」
弟「………まぁ、いいんだけど、なんで二人で歩いてコンビニに行ってるんだぜ?」
姉「お兄ちゃん、語尾が変だよ? だって、こんな夜遅くに女の子が一人でコンビニなんて危ないし」
弟「女の子?」
姉「あァ? 何か言った、お兄ちゃん?」
弟「車で行けよ」
姉「妹は車の運転が苦手なの。オートマしか乗れないの」
弟「え、なにその設定。ぶりっこ?」
姉「あ、お兄ちゃん、流れ星っ! お願いごとしなきゃ! えーと、お兄ちゃんの背があと10センチ伸びますように」
弟「なんという余計なお世話! ていうか、街灯きついんだけど、流れ星とか見えんの?」
姉「いいの! そういう設定なんだから!」
弟「どういう設定だよ…」
弟「姉ちゃん」
姉「なぁに、お兄ちゃん? あと、私はお姉ちゃんじゃないんだけど?」
弟「歩きづらいんだけど、腕離してくんない?」
姉「もー、お兄ちゃんたら恥ずかしがり屋さんっ!」
弟「うん、マジ恥ずかしいよ。お兄ちゃん、女性と腕組んで歩くとか超恥ずかしいから、やめてくんない?」
姉「恥ずかしがらなくてもいいじゃん、兄妹なんだからぁ」
弟「兄妹にどういう幻想を抱いてるのか知らないけど、普段やらないでしょ、こんなの」
姉「……だって、弟と腕組んで歩くとか恥ずかしいし。ご近所に『あの歳でカレシの一人もいないのねー』とか噂されちゃうし」
弟「いや、この状況も外から見れば、姉と弟が腕組んで歩いてるようにしか見えないから」
姉「………そ、そういえば、そうかも!?」
弟「そうかもって、そーだよ…そうに決まってんじゃん…」
姉「………な、なんという恥ずかしい姉弟!?」
弟「あ、あのさ、姉ちゃん? だから腕を離せというに」
姉「…う、うむ! ドッキングアウトだ!」
弟「よ、よし…姉ちゃん……ドッキングアウトのタイミングはわかってるな?」
姉「もちろん! 気をつけて、タイミングを少しでも間違えば……ううん、なんでもない。成功確率は0.00000000003パーセントか…」
弟「わずかでも可能性があれば! 残り99.999999999997パーセントはガッツで100パーセントにしてみせる!」
姉「よく言った! さすが私の弟! 準備はいい? 行くよ!」
弟「ドッキング!」
姉「アウト!」
店「283円になりました!スプーンは?」
姉「ぁ、はい…ふ、ふたつ……ぉ、お願いします」
店「スプーンは二本でした!」
姉「………」
店「17円のお返しになりました! ありがとうございました! よくお越しくださいました!」
姉「……ふぅ」
弟「あ、姉ちゃん、ちょっとトイレ行ってくるから」
姉「え? う、うん。じゃあ、外で待ってる」
弟「なんで? 雑誌でも読んでたら?」
姉「で、でも、もうお会計しちゃったし」
弟「そう?」
姉「うん。……早くね」
弟「…努力する」
姉(ふぅ…遅いなぁ………大きい方かな?…こんな暗いトコで女の子を待たせるとか…)
A「うへぇっ! マジマブいスケがいるんすけどー」
B「マジ? マジ? うわこれマジじゃね? マジマブじゃね?」
C「さすが柏中のハイエナことツヨシ君だわー惚れるわマジー」
姉(……うわ…なにこの世紀末の汚物)
A「ちょ、コレ俺たちに神様からのギフトじゃね? お中元じゃね?」
姉「は?」
B「マジで!? マジお持ち帰り!? マジランデブーでマジご宿泊っすか!? うわーツヨシ君マジ鬼畜だわー」
姉「ぇ…あ、あの…」
C「『あの』だって、萌え萌えなんですけどフヒヒヒ! さすがツヨシ君! ホゴカン中にレイプとかありえねーわ。惚れるでしかしー」
姉「れ!?」
A「ふっへっへっへ…ねーちゃん、ちょろっと俺らとイイコトしようぜぇ」
姉「や、やだ…」
B「うっへっへっへ…マジ今、どんなパンツ穿いてんのかなー」
姉「み、見ないでぇ…」
C「…でも、俺の好み的にはもうちょっと巨●な方が」
姉「なんだと、コラ」
A「いや、お前は貧乳のよさがわかってない」
姉「誰が貧乳だ誰が」
C「はァ? ツヨシ君ともあろう人が、巨●がいいに決まってんじゃん、はさんだり、はさまれたり、はさまったりできるんだぜ?」
A「…そ、そうかも」
姉「…ちょっと、ツヨシ君、ハッキリとひ…控えめな乳の良さを主張しなさい。リーダーでしょ、あなた」
B「そんなことよりマジパンツの確認したいんすけど」
姉「ていうか、あんたはパンツパンツと…今大事な話してるんだから黙ってろ」
弟「ええと、なにこれ」
姉「…あ、いいとこに来た、あんたはちょっと控えめなくらいが好きよね!? お姉ちゃんくらいの大きさがベストよね!!」
弟「え? あ、うん…大きすぎるよりは……まぁ、姉ちゃんくらいのなら…」
C「おいおいマジかよ…あんたインポ? 惚れないわーこれはないわー…巨●の良さがわからんとかありえないわー」
弟「いや、まぁ、巨●もいいとは思うけどさ」
姉「なに、あんたどっちの味方なわけ?」
A「俺、どっちかっていうと乳輪のサイズの方が気になるって言うか」
B「…ちっ…マジ乳臭ぇガキどもだな……男のマジロマンはパンツにあるっつーのに」
弟「あ」
A「どうした? いや、俺さ、乳輪は小さい方がいいよなぁって思ってたんだけどさー」
弟「そこまでだ! 姉ちゃんの手を離せ、世紀末汚物ども!!」
A「え?………あ、そだ…ひゃっはー! てめぇ、誰だ!」
B「え、えーと…どこ中だコラ!」
C「ていうか、手をつかんですらないけど」
弟「姉ちゃんに指一本でも触れてみろ! タダじゃおかないぞ!」
姉「ちょ、違うでしょ! 『お兄ちゃん!』」
弟「あ……い、妹に指一本でも触れてみろ! タダじゃおかないんだからねっ!」
A「んだと、てめ、ぶっこぉすぞコノヤロウ!」
B「マジどこ中だコラ! 柏中のツヨシ君ナメてんじゃねぇぞ、コラ!」
C「いやまぁ、アレっしょ? もう、ケーサツとか呼んでたりするんしょ?」
弟「え? あ、さっきお店のひとに頼んで呼んでもらっちゃったけど」
A「え? マジっすか…うわぁ……俺、ホゴカンだから、それはねーわ」
B「帰ろーぜ。マジしらけるしー」
C「だなー」
弟「あ、ごめん、つい」
A「あーいいっていいって、んじゃ、またなー」
姉「またねー」
姉「あーあ、プリン絶対ぬるくなってるしー」
弟「ね、姉ちゃん?」
姉「なぁに? お兄ちゃん? 私、お兄ちゃんのお姉ちゃんじゃないんだけど?」
弟「行きでも言ったけど、歩きにくいので腕を離して」
姉「…ヤ」
弟「う…ほ、ほら、ご近所に噂されるよ? 『その歳になってカレシいない暦=年齢』とか」
姉「……最近涼しくなってきたし」
弟「いや、密着されると暑い」
姉「いいでしょ、お兄ちゃんだって、胸があたってホントは嬉しいくせに!」
弟「む……ね…?」
姉「うふっ…なんだろその疑問符は?」
弟「あ、あたってる! う、うん、あ、あたってる!! いやっほぅ!! ちょー嬉しいぞう!!」
姉「わざとらしすぎ」
弟「ごめんなさい」
姉「…お兄ちゃん」
弟「な、なに?」
姉「さっきは、その……あ、りがと」
弟「へ?」
姉「じつは、ちょっと怖かった」
弟「ああ……てか、わざわざ暗いとこで待ってないで、店の前で待ってなよ」
姉「だ、だって、お店の前だとジャマになったらいけないでしょ?」
弟「…はぁっ」
姉「なによそのタメ息」
弟「べっつにー。まぁ、俺のかわいい妹を一人で行かせないでよかったなーってとこだなぁ」
姉「か、かわっ!?」
弟「ん? どしたの、姉ちゃん? 顔、赤い…ていうか、暑い……なんか汗じっとりしてるんだけど、離してくれない?」
姉「ん~~~っ!!」
弟「折れる! そんなに強くしたら、腕折れるから! ギブ! ギブ! ロープ! ロープ!」
—————
弟「おんせん?」
姉「そう、温泉。2泊3日」
弟「…ええと、いってらー?」
姉「あんたも行くの」
弟「明日からって、めちゃ平日なんですけど」
姉「そう。だから、お父さんもお母さんも行けないんだって」
弟「俺も学校…」
姉「休め。2、3日休んだくらいで進級できないわけじゃないでしょ?」
弟「そりゃ、そうだけど」
姉「せっかく当ったんだし、もったいないし」
弟「姉ちゃん、一緒に行く友達とかいないわけ?」
姉「――!?」
弟「ごめん、今のナシ! 行くから! 俺、行くから! ね? 泣かないで?」
姉「さて、旅館に着いたわけだが」
弟「姉ちゃん…このカバンなに入れてんの? これ超重いんですけど?」
姉「ノンノン! 私、妹。 あなた、お兄ちゃん」
弟「またか!?」
姉「せっかく私たちのこと知らない人ばっかりのとこに来たんだからさー。ね、いいでしょ? お兄ちゃん?」
弟「やだ。めんどい」
姉「しかたない、弟は私にまた『お兄ちゃんのおち●ちんズボズボして精子びゅーびゅー子宮に出して』と大声で言えと」
弟「言ってない! しかも、なんでそうアレンジするのさ!?」
姉「違う? えと、こっち? 『お兄ちゃんのしぼりたてザー」
弟「さ、妹よ! マイシスターよ! こんなところで立ち尽くしてないで、旅館の部屋でゆっくりしようじゃないか!」
姉「うん! お兄ちゃん♪」
仲居「まぁ、お兄さんと二人で? 仲がよろしいですねぇ」
姉「はいっ! とっても仲良しなんですよ! ね、お兄ちゃん?」
弟「仲良しですとも。 がははは」
仲居「がは?」
姉「(お兄ちゃんキャラ崩れてる崩れてる)」
弟「(姉…お、お前こそ、なにその元気系妹っぽさ、設定変わってない?)」
仲居「あの…お部屋までご案内を」
姉「え? あ」
弟「ああ、すいません、どうも。 ほら、行くぞ」
姉「う、うん」
姉「ん。なかなか良い感じの部屋。でも、お客さん少ないみたいだねぇ」
弟「そりゃ、平日だから…。ところでさ」
姉「なぁに、お兄ちゃん」
弟「さっきの仲居さん、絶対俺らのこと兄妹って思ってないよ…」
姉「あー…そうかもね」
弟「『なに兄妹のフリしてんだこのバカップルが』とか思われてるかも」
姉「………まぁ、それならそれで、いいじゃん?」
弟「良くない。他人とはいえ、なんか恥ずかしいだろ」
姉「旅の恥はカキステ! と昔の人は言ったもの。ところでこのカキステってなんだろね?」
弟「……恥をかくの『かく』と捨てるの『捨て』かな?」
姉「なるほど、さっすがお兄ちゃん!」
弟「…もういいよぅ……うぅ………俺はお兄ちゃん…俺はお兄ちゃん…俺はお兄ちゃん…」
姉「よしよし。三日間よろしくね、お兄ちゃん」
姉「よしっと、それじゃ」
弟「さ、荷物バラしたら、とりあえず温泉に行こうか。浴衣忘れんなよ」
姉「え? あ、うん」
弟「なに? 他に行きたいところあったりした?」
姉「ううん、私が言おうと思ったこと、あんたが言ったからびっくりしただけ」
弟「ああ、そういうこと。だって、兄妹二人の旅なら、兄貴がリードするもんだろ?」
姉「う、うん」
弟「…もしかして、こういうのダメ?」
姉「だ、ダメじゃない。ダメじゃない。全然ダメじゃない…っていうか、むしろ、リードしてほしい。ひっぱっててほしい」
弟「え? そ、そうか。よし。頑張ってみる」
姉「…うん」
弟「ええと、風呂場は地下1階だってさ」
姉「う…う、うん、あ、あの、お兄ちゃん?」
弟「なに? あ、そこ段差あるから気をつけて」
姉「え? あ、うん。ありがと」
弟「で、なに?」
姉「い、いやぁ…なんで手をつないでるのかなぁって」
弟「へ? だって、『ひっぱってけ』と言われたから」
姉「あ、ああ、そっか…あと、なんかさっきからみょーに優しくない?」
弟「そりゃ、兄貴なんだから、妹に優しいのは当たり前……って、もしかして、違った? こういう意味じゃなかったとか」
姉「ちがくない。ちがくない。いいかんじ。こういうかんじ…で、でも、ほらちょっと周りの目が恥ずかしいかもとか?」
弟「何を今さら…かき捨てるんだろ…」
姉「そ、そっか、そだよね! うん!」
弟「…ごきゅごきゅ………ぷはぁっ……くぅ~っ…やっぱ温泉上がりにはコーヒー牛乳だなぁ」
姉「おまたせー」
弟「ごくっ…ん。早かったな」
姉「うん。あ、いいなーいいなー」
弟「え? ああ…オレンジ…じゃなくて、みかんジュースだっけ?」
姉「ふぇ? う、うん」
弟「ちょっと座ってて、買ってくるから」
姉「え? え、ええと、おかねは」
弟「いいよ、おごり」
姉「あ…ありがと」
姉「温泉といえば…」
弟「卓球!」
姉「ふっふっふ…お兄ちゃん、手加減はしないよ! なにせ私は中学まで卓球部!」
弟「フッ…高校をマン研で過ごしたような奴に負けるものか…こう見えても俺は英検3級だぜ!」
姉「…そっちにサーブ権をあげる。ま、ハンデね」
弟「ククっ…すぐにその甘さを後悔することになる…くらえ!」
姉「な、まさかアレは」
弟「必殺サーブ『EFBドライブ』!!」
姉「説明しよう!EFBドライブとはエターナルフォースブリザードドライブの略であり、一瞬で相手の周囲の大気…って、あ」
弟「よっしゃ!」
姉「ちょ、説明してる間はノーカン! お兄ちゃん、ずるい!」
弟「いや、どうみてもアリです。本当に(略)ていうか、なんで説明してんの?」
姉「あったまにきた、サーブ交代ね! くらえ! 必殺ディアボリック・デスバーストっ!!」
弟「え、サーブ交代は5ポイント毎っしょ!?…って、あ」
姉「いえーい、スリーポイントー」
弟「ないから! 卓球にスリーポイントないから! あんたホントに元卓球部か!?」
弟「ふぅー食った食った」
姉「お兄ちゃん、お行儀悪いよ?」
弟「えーいいじゃんよぉ………って」
姉「ん?」
弟「ちょい、動かないで?」
姉「お、お兄ちゃん?」
弟「だから、動くなと言ってるのに」
姉「だ、だって、顔、近いから――って、近い、近いって!」
弟「はぁ? いいから、動くな」
姉「あ、あのあの、せめて、ハミガキさせて」
弟「わけがわからん…」
姉「わ、わわぅっ……ん~っ………?」
弟「……ん、よしっと…って、なんで目、つむってんの?」
姉「だ、だだって、というか、今、な、なにをするだァーッ?」
弟「え? ほっぺたにご飯つぶが」
姉「な、なんで、口で取んのっ!? 手で取れよっ!! 手でっ!! 手ぇあるんだろっ!!」
弟「そ、そんなに怒らなくてもいいじゃない」
弟「うんうん、いいよね。このごはんを食べ終わったら、部屋に布団が敷いてあるって良いサービスだよね」
姉「………」
弟「ん? どうしたの? ほっぺたがどうかした?」
姉「な、ななななななに!?」
弟「なに…って、いや、さっきから、ずっと自分のほっぺたムニムニしてるから……って、顔、赤いよ? 大丈夫?」
姉「だ、だいじょぶ! じょぶ!」
弟「熱あるんじゃ…」
姉「って、顔近いってば! 手で測れ! 手で!」
弟「うーん、俺、手で測ってもよくわかんないんだけどなぁ……やや熱い?気がする」
姉「ほ、ほら、ごはん食べるとあったかくなるし!」
弟「そう? 本当に気持ち悪かったりしない? 気分悪かったりしない?」
姉「…というより、むしろ」
弟「うん?」
姉「ま、マクラ投げ! マクラ投げするよー! マクラ投げ!」
弟「いや、体調悪いんだったら寝てなよ」
姉「第一回 ドキっ浴衣だらけのマクラ投げ大会~! どんどんーぱふぱふー! じゃじゃ丸ピッコロ~♪」
弟「ポーロリー…って、ヤだよ!姉ちゃんマクラ投げになると理性がとんで獣になるじゃん!」
姉「お兄ちゃんっ!?」
弟「あ、ま、マイシスターはマクラ投げになると獣になるだろ」
姉「獣でもいい…人間だもの」
弟「わけわかんないし…」
姉「というわけで、スタート!」
弟「って、ちょ、なに自分だけ押入れからマクラ出してんのさ!」
姉「戦いは常に非情なの……そして、ここは戦場よ!」
弟「あんたって人はぁっ!」
姉「うがぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
弟「ふぐぉるぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
姉「みぎゃらぁぁぁぁぁすっ!!」
弟「きしゃぁぐぅぅぉぉぉおおおん!!」
姉「きょああぁあぁあああああああ!!!!!」
弟「ヴォッフォ゛ッフォ゛ッフォ゛ッフォ゛ッ!!」
姉「ぜっ!とん!! ぴゅるぴゅるぴゅるぴゅる!!」
弟「ホォワァ゛オォォ!!」
姉「ブルキャァスグォェ! ブルキャァスグォェ!」
弟「グルゴォァラァッショ! グルゴォァラァッショ!」
姉「はぁっ…はぁっ…」
弟「ふぅっ…ふぅっ…ふへぇぅ…」
姉「ダラしない! 立ちなさい! まだ勝負は終わって――」
仲居「失礼します」
姉「な」
弟「へ?」
仲居「申し訳ございませんが、他のお客様のご迷惑になりますので『ドキっ浴衣だらけのマクラ投げ大会』は控えていただけませんか?」
姉「あ、はい…」
弟「す、すいませんでした…」
仲居「では、失礼いたしました」
姉「………なんで、仲居さんタイトルまで知ってたんだろ?」
弟「…さあ?……とりあえず、もう寝るか」
姉「あ、私、汗流してくる。お兄ちゃんは?」
弟「んー…俺も行く」
弟「…もう、むり……ねる…」
姉「こらこら、寝るなー。夜はこれからー!」
弟「…むり……むり…ねむい…」
姉「もー! ぜったい修学旅行とかでも友達より先に寝ちゃってたでしょ!」
弟「だって…ぬむい…」
姉「起きろー寝たら死ぬぞー」
弟「しぬ……しんじゃう……いっちゃうよぉ…らめぇ…」
姉「………」
弟「………くー…くー…」
姉「…寝ちゃうし」
姉(こっちはドキドキして眠れんというのに…)
姉(浴衣はだけてるし…)
姉(…パンツ見えてるし)
姉「………別に、なんてことないけど? ていうか、なに見せてんの…もう!」
姉「………」
姉「…直してあげようっと」
姉「…おおっと、手が滑ったぁ!」
姉「………わりと筋肉が…腹筋、割れてるし」
姉「こ、これは、だいぶ腹筋スレに鍛えられたということアルネ!」
姉「………」
姉「………そ、添い寝くらいは普通じゃん? 兄妹だし…一緒の布団で寝ることもあるよね?」
弟「…ふみゅ?」
姉「ぁむ…ちゅ……れろっ……ふぁ、おっきした? おにいひゃん…ちゅぷ…」
弟「な、なななななにをしてるだァーッ!?」
姉「…そのネタ二回目」
弟「いやマジなにやってんすか? 目醒めるしマジで」
姉「…お兄ちゃんの、乳首舐めてた」
弟「そ、それだけ?」
姉「それだけだけど……もしかして、もっといろいろしてて欲しかった?」
弟「い、イロイロ!?――って、乳首の時点でアウト! アウトだから!」
弟「こほん…実は、俺の乳首を刺激するとその電磁パルスが引き金となって富士山の噴火活動が――って、舐めるのやめ!」
姉「んくっ…いいじゃんー…兄妹ならみんなやってるよぉ…」
弟「やってない! つか、よそはよそ! ウチはウチ!」
姉「じゃぁ…ウチは兄妹が乳首舐めるおうちの方でー……ちゅっ…ちゅぅぅぅぅぅっ」
弟「吸わない! そこ吸わない! 吸うのダメ! 父乳が出るようになっちゃうだろっ!?」
姉「じゃあ、出るまで吸う~」
弟「出ないから! 吸われても気持ちいいだけで出ないから!」
姉「お兄ちゃんも私の吸う?」
弟「え」
姉「今、出すから」
弟「出さなくていい! 出さなくていいから! ちょ、姉ちゃん!? しっかりして、姉ちゃん!!」
姉「やだなぁ…お兄ちゃんったら、私はお兄ちゃんの妹だよぉ」
弟「だから、帯ゆるめなくていいから!!」
姉「…えっとぉ、着たままがいいってこと?」
弟「あ、うん…どっちかっていうと着たままのほうが興奮するな――じゃない! 戻ってきて! 戻ってきて、姉ちゃん!!」
姉「もー、お兄ちゃんってば、だから、私は姉じゃなくて――あれえ?」
弟「わかった! わかった! お兄ちゃんでいいから!」
姉「………お兄ちゃん、さっき私のこと大好きって言ったよね?」
弟「…いや、今の今まで寝てたんですけど?」
姉「…いや、私も今夢の中にいるはずなんですけど?」
弟「………」
姉「………」
弟「現実ですが」
姉「まっさかー…えいっ☆」
弟「ぐぼはぁっ!?」
姉「………こ、このコブシの痛み、まさか」
弟「…あのすげぇ痛いんですけど……殴るなら殴ると一言」
姉「…ぐー…ぐー」
弟「おい、寝たふりか?」
姉「逆に考えるんだ」
弟「はぁ?」
姉「今、ぐっすり寝てしまえば、さっきのことは夢だったっていう夢オチで明日の朝を迎えられるだろう?」
弟「そ、そうか? めっちゃ、ほっぺた痛いんすけど…」
姉「甘ったれるな! 私のコブシも痛い……しかし、これは夢の中のできごとなんだ」
弟「た、確かに、最近の研究では夢でも痛覚は再現されるって聞いたことがある」
姉「つまりは、そういうことだ!」
弟「どういうことよ!?」
姉「……仕方ない。気を失うまで、後頭部を殴打し続けるしか」
弟「うっ…急に眠気が…さっきのことはもしかして夢だったんじゃね?」
姉「よし、おやすみなさい」
弟「お、おやすみ」
弟(…て、言われても…眠れるわけなくね?…)
姉「…ぁ…あ、あの…起きてる?」
弟「…ね、寝てるよ! 起きてないよ! 殴打はやめて!」
姉「いや、あの、寝てるなら寝てるでいいから、答えなくてもいいんだけど…どこまで夢だったのかなぁとか」
弟(…素直に寝たフリをしよう……後頭部はマジで危ない…)
姉「ええと、たぶん、お兄ちゃんが『とりま、乳首を舐めろ』って言ったのも夢の中のことだとは思うんだけど」
弟「当たり前じゃん! 言うわけないじゃん! そんなこと!」
姉「そ、そっか…」
弟「てか、どういうフラグを立てたら、そんなシチュエーションが起こるんだよ!」
姉「ええと、確か…『膣内で出して欲しかったら、俺の乳首を舐めろ』的な」
弟「俺はどこの鬼畜モンだと………いや待って、それ前提としてなにそれ膣内出し!?」
姉「日本語変だよ」
弟「いやいや、変なのはそっちじゃん? なんでそんな要求飲むのさ?」
姉「だって…してほしいって思ったから」
弟「ええと…?」
姉「あの、これから言うことも…全部、夢の中の出来事だから」
弟「?」
姉「…おにいちゃん、だいすき」
弟「………な」
姉「大好きすぎて…もう……止まらないの」
弟「な、なにが」
姉「…お兄ちゃんは、私のこと嫌い?」
弟「き、嫌い、じゃないけど」
姉「そう。よかった……おやすみなさい、お兄ちゃん」
弟「…お、おやすみ?」
弟(…すき……好きだよなぁ…鋤とか鍬じゃないよなぁ…当たり前じゃん…)
弟(姉ちゃんが…俺のこと?)
弟(……まさかねぇ)
弟(…性欲を持て余してるってことだろうなぁ…)
弟(…カレシの一人でも作ってヤっちゃえばいいのにさ…)
弟(……そりゃまぁ、段階を踏んでからなら…欲望のままに姉ちゃんを犯すような奴は論外だし…)
弟(…いつかは姉ちゃんだって、『お嫁さん』になるんだろうし…)
弟(…まぁ、いつのことかわかんないけど…それに姉ちゃんネクラだし貧乳だし、相手なんか出てこないかも…)
弟(…だったら、俺が…)
弟(………俺が?…)
弟(…なに考えてんだ…バカか、俺は…)
弟(…姉ちゃん、もう寝たかなぁ…)
姉「……んぅっ……はぁっ…はぁ……おにいちゃんっ…」
弟「なにしてんのさ…」
姉「ひゃぁっ! お、起きてたの?」
弟「…まぁ」
姉「……えっと…寝たら?」
弟「なにしてたの?」
姉「え……えっと…寝る前の儀式?」
弟「オ●ニー?」
姉「……そ、そうともいうかも?」
弟「性欲を持て余して?」
姉「だ、だって…」
弟「ごめん。イヤだったら、抵抗して」
姉「お兄ちゃ…きゃぅっ」
姉「…お、にいちゃん?」
弟「ごめん…我慢できなくて」
姉「……お兄ちゃんの、固くなってる…いつから? 乳首舐めてたとき?」
弟「わかんない…ごめん」
姉「謝らないでいいよ…私こそごめんね、きっと私のせいだよね?」
弟「ごめん」
姉「うん…いいよ、入れて……お兄ちゃんになら、いいよ」
弟「……ごめん」
姉「んっ……ひゃぅ」
弟「あ、あれっ?……えっと、こ、ここだよね?」
姉「え?…ん、と……う、うん…ここ」
弟「ええと、いきなり入れてもいいの?」
姉「…うん、さっきまで、濡らしてたから…たぶん、だいじょぶ……来て、お兄ちゃん」
弟「こ、こう? ん……っく……ぁ」
姉「んっ!!…ん~~~~~~っ!!!!」
弟「…っはぁ…こ、これ…入ったよ」
姉「~~っ!!…ぅ、ん……はぁっ…うごっ……うご、かしてっ…」
男「う、うん…わかった…んぁ…はぁっ…ヤバい、これ……もうっ…」
姉「~~っ!! ――っ!!! ~~っ!! も、もう――て、だすの?」
弟「んっ! はぁっ! ごめ、腰止まんないっ!」
姉「~~っ!! ――っ!!! ~~っ!! ――――――っ!!!」
弟「姉ちゃんっ! 姉ちゃんっ!! 姉ちゃんっ!!!」
姉「~~~~~~っ!!!!」
弟「……っん、はぁっ…はぁっ…姉ちゃん…」
姉「…ん…っ…はぁぅ~…はぁ…はぁ……お兄ちゃんの…精子、出されちゃった…ふふっ…」
弟「…ごめん」
姉「謝んなくてもいいってば………謝罪より賠償…そーだなぁ、ぎゅぅーって」
弟「ごめん…もっかい、いい?」
姉「え」
弟「ごめん…ほんとごめん」
姉「んぅっ!! 痛ぅ…動いて」
弟「だって、気持ちよくて…ん……ごめん」
姉「~~っ!?」
弟「はぁっ…はぁっ…姉ちゃんっ……姉ちゃんっ」
姉「~~っ!! ――っ!!! ~~っ!! ――っ!!! ~~っ!!」
弟「気持ちいいよっ…姉ちゃんっ!…姉ちゃんっ!!」
姉「~~っ!! ――っ!!! ~~っ!! ――っ!!! ~~っ!!」
弟「…はぁっ……はぁ…姉ちゃん、ごめん」
姉「………」
弟「姉ちゃん? 姉ちゃんっ!」
姉「……ぇ、あ……あちゃ」
弟「姉ちゃん? 大丈夫?」
姉「あ、うん、だいじょぶだいじょぶ。ちょっとよすぎて、その、イってただけ」
弟「なんだ…そうなんだ、あー心配したぁ」
姉「ごめんごめんー。 あ、そだ、お兄ちゃん」
弟「………あ」
姉「あの、なんでまだ大きくなってるんでしょうか?」
弟「…ごめん、もっかい」
姉「え、えと、私、もうおねむの時間かなーって…」
弟「……あ…そっか、ごめん。もう朝方だもんな」
姉「そうそう、それに明日――っていうか、今日もあるんだし、焦らなくても」
弟「それもそっか……ふわぁぁ…なんか眠くなってきた」
姉「うん、寝よう。今日はもう寝よう」
弟「うん。そだね。…よいしょっと」
姉「い゛っ!?~~~っ!!」
弟「ね、姉ちゃん!? どうしたの?」
姉「…っ…ぇ、あ…は、ちょっと今、おち●ちん抜かれたとき、軽くイっちゃったー…みたいな?」
弟「なんだ…そか……ふぁぁぁぁ」
姉「ふふっ…眠そう。あ、そだ、お兄ちゃん…あのね、さっきの賠償の件だけど、寝るまでの間でいいから、ぎゅって……って」
弟「……くぅー…くかー…くかー」
姉「お、お兄ちゃん!? のび太か、あんたは!! 起きて! 1、2分でもいいから、こう、ぎゅ~って……完全に沈黙」
姉「痛っ!?……ていうか、普通に痛いし……痛みで気が遠のいたのって初めてだし…」
姉「こら、何のんきに寝てんの? あんたは気持ちよかったかもしれないけど、こっちは心しか気持ちよくなかったんだからね!」
姉「……はい、熟睡中。聞いてませーん…」
姉「もちろん聞かれてたら困るのですが」
姉「さすがにこの歳で処女はねーよ(笑) しかも弟で喪失とかマジありえねー(笑)」
姉「さて、姉のプライドを守るためにも……シーツの替えを貰いに行くかなぁ…」
姉「…痛っ……って、これ、フロントまで行けるかなぁ……てか、激しすぎなのよ…ちょっとはこっちの体を気づかえっていうか…」
姉「そりゃ、気づかわせなかったのは、私だけど」
姉「いたたた…って、あれ?……なんで、ドアを開けたら新品のシーツと浴衣が…」
姉「ええと…サービスが行き届いてるというか…ここまで来ると不信感が募るというか…」
姉「ま、いっか」
姉「あ、起きた?」
弟「う…んー……」
姉「お寝坊さん、お寝坊さん、今何時でしょう?」
弟「…腕がしびれてる」
姉「いや、せめて腕マクラくらいしてもらわないと採算がとれないし…はい、残念時間切れ! 14時でした!」
弟「…じゅうよじ」
姉「もう、お昼の2時ですよ、ア・ナ・タ」
弟「………」
姉「お兄ちゃん?」
弟「夢オチ!?」
姉「いやーそれはどうだろう。ちなみにどんな夢? 大豪院邪鬼先輩と大威震八連制覇で戦う夢だったら夢オチかも?」
弟「そういうファンタジーじゃなくて、もっとリアルな………!?」
姉「そこでパンツの中を確認するのってどうかと思う。ちなみに出しっぱなしで寝てたから、タオルで拭いて直した」
弟「それは、どうもご迷惑をおかけして……ということは、つまり」
姉「さすがに妹に手を出しておいて、夢オチで片付けようなんて都合がいいと思うな、私」
弟「ごめんなさい」
姉「うん、いさぎよい土下座ですね。さて、懺悔してもらいましょう…お兄ちゃんは何をしたか覚えてるかなぁ?」
弟「…なかで出した」
姉「しかも、2回ね。責任とってね」
弟「それは、もちろん」
姉「冗談冗談」
弟「いや、冗談じゃなくて、マジで」
姉「あれー? お兄ちゃんが謝ることって中出しだけー?」
弟「え?」
姉「乳首舐めを強要した」
弟「してない! それはしてない!」
姉「うぅ…お兄ちゃんに乳首舐めを強要されたよぅ…傷ついたよぅ…」
弟「ご、ごめんなさい」
姉「というわけで、懺悔も終わりー。さ、朝ごはんか昼ごはんかよくわかんないブランチを食べよ?」
弟「でも、俺、むりやり…」
姉「気にしない、気にしない。私も気持ちよかったし、オールおっけー!」
弟「いや、でも」
姉「オモテを上げい!」
弟「ははーっ」
姉「おうおうおう!! さてお兄ちゃん、妹に中出し孕ませ罪とあるが相違無いか」
弟「へへっ…オブギョー様、バカ言っちゃいけねぇや、まさか妹に中出しする兄貴がいようはずがありやせんでしょう?」
姉「おうおうおう!! 黙って聞いてりゃ寝ぼけた事をぬかしやがって! この桜吹雪に見覚えがねぇとは言わせねえぜ!」
弟「ははぁ!! 畏れ入りたてまつりました!!」
姉「今後、お前は妹及び姉の言うことに絶対服従、それができなければ、市中引き回しの上、打ち首獄門に処しゅ!」
弟「え、なにそれこわい」
姉「お父っつぁんを大事にしなよ…これにて一件落着!」
弟「え?」
姉「つぎ、にんじーん」
弟「はいはい…あ、あーん?」
姉「あむ。ぐもぐも。うん、おいしい。お兄ちゃん、どれ?」
弟「えと、卵焼き」
姉「あーん?」
弟「あ、あーむ。 もぐもぐ……なぁ、これ、そろそろ…」
姉「ダメ。食べ終わるまで」
弟「いや、これ食べるのにすごい時間がかかるっていうか」
姉「あ、次はスープがいいなぁ」
弟「あと、そろそろ足もしびれてきました」
姉「なによ? 私が重いって言うの?」
弟「重いか重くないかでいえば、重い。てか、あの、スプーンで口元まで持っていくの非常に厳しいんだけど」
姉「難しいなら口移しでもいいよ? てか、今、重いって言ったか? 重いっていうのは、こういう」
弟「いたっ…痛い痛い! 体重かけないでーってこぼれる! スープこぼれるから!」
姉「ふふっ…どうしたんだい? 恥ずかしがらないで、こっち向いてごらんよ」
弟「むりだろ…俺、ムーミントロールじゃないし…むりだし」
姉「お兄ちゃんが全裸より着てた方が興奮するっていうから、わざわざ湯衣を借りてきたというのに」
弟「着るならちゃんと着てください…着崩しのエロスは危険が危ないのです…」
姉「ほらほら、家族風呂2時間しか借りてないんだから、早くお風呂に入ろうよ」
弟「ひ、ひっぱらないでぇっ」
姉「お」
弟「………」
姉「なんでもうこんなに、立っちゃってるんでしょうか、お兄様?」
弟「仕方なくね? 自然の摂理じゃね?」
姉「ま、それもそっか。さ、お風呂はいろ! ひさしぶりだなぁ、お兄ちゃんとお風呂~」
姉「お兄ちゃん、髪洗ってー」
弟「…あいあい」
(略)
姉「お兄ちゃん、体洗ってー」
弟「…あいあい」
(略)
姉「お兄ちゃんの体洗ってあげるー」
弟「…あいあ!?」
(略)
姉「…ふぅ。いい湯加減だねぇ」
弟「…あいあい」
姉「お兄ちゃん、頑張って心を閉ざして現実から目を背けてるのはいいんだけど」
弟「…あいあ――って、ななななにを」
姉「こっちはずーっと、固いままだね……こんなのが昨日入ってたんだ」
弟「に、にぎるな」
姉「こう? すこすこ?」
弟「ひゃぅん!?」
姉「そういえば、尿道になにかを入れると気持ちいいってネットに書いてあった」
弟「入れるのか…入れてみろ…『ひぎぃ』って言ってやる…声高らかに『ひぎぃ』と叫んでやる…」
姉「んー…れろっ」
弟「ひぎぃっ!!」
(略)
姉「んしょ、んしょ…っと」
弟「…いや、むりっす…もう出ません」
姉「むぅ…確かに固くならない……この根性ナシめ! ていてい!」
弟「あの、俺の息子を虐待しないで下さい。ていうか、そろそろ、2時間じゃね? ここを別の世帯に明け渡す時間が刻一刻と迫ってるんじゃね?」
姉「それもそだね」
弟「出ましょう! 他世帯に迷惑をかけてはいかん!」
姉「んーでも、もうちょっと息子さんと遊びたいなぁ」
弟「いや、もう息子、お昼寝の時間だから。おねむだから。おねんねのじかんだから」
姉「あー昨日夜更かししたもんねぇー」
弟「そういうことです。なので息子を解放してくださいっ」
姉「…まぁ、今はふにゃふにゃしてるが、無事は無事だぜ?…まさか、警察には言ってないだろうな?」
弟「当たり前じゃないですか、(あ、刑事さんちゃんと録音できてます?)息子の命がかかってるんですから!」
姉「まぁ、いいだろう…身代金の受け渡し場所にちゅいてふぁが」
弟「んぅっ…って、だから、口にふくむな!」
姉「…ちゅっ…やだって、元気なところが見たいかと思って」
弟「…よ、ようやく…食い終わった…」
姉「晩ご飯もおいしかったねぇ、お兄ちゃん」
弟「ひ、ひざが…うでが…」
姉「軟弱モノねぇ…」
弟「自分、軟弱ボーイっすから…」
姉「ごはんも食べたことだし、まだ眠るのには早いしさ……今日も、その…する?」
弟「…す、するっ」
姉「うんっ…じゃあ、準備するから待ってて」
弟「準備って……あの、なんでマクラを押入れから出してるんですか?」
姉「第二回 ドキっ浴衣だらけのマクラ投げ大会!!」
弟「そっちかよ!? てか、昨日怒られたじゃん!!」
姉「問答無用!! スキあり!!」
姉「きょああぁあぁあああああああ!!!!!」
仲居「失礼します」
(略)
弟「す、すいませんでした…」
(略)
弟「むー…マジ眠いし…」
姉「えー今日も寝んの? ありえなくないっすか? つか、マジありえねー」
弟「いや、昼間、搾り取った人がそういうこと言う?」
姉「えー起きてお話しようよー恋バナとかしようよー」
弟「誰か好きな人いんの?」
姉「お兄ちゃん」
弟「マジでー」
姉「お兄ちゃんは誰か好きな人いるの?」
弟「姉ちゃん」
姉「マジでー」
弟「よし、恋バナ終わり! おやすみ!」
姉「いや、あっさりすぎ! あっさりすぎでしょ! もっと濃厚かつねちっこい時間を楽しもうよぉ」
弟「…楽しんでもいいけど(略)って書かれるだけだよ、きっと」
姉「いいじゃんー、えっとね、お兄ちゃんはどんな妹が理想の好み?」
(略)
弟「うぅ…おやすみ…」
姉「寝ちゃうんだ…お兄ちゃん、私を置いて寝ちゃうんだ…」
弟「えと、一緒に寝る?」
姉「そりゃ一緒に寝るけど」
弟「さも、当然のように!?」
姉「当然! てか、明日になったら、おうちに帰んなきゃだからねぇ。お兄ちゃんと一緒に眠れるのも今日まででしょ?」
弟「……やっぱ、そうなんだ」
姉「そりゃ…そうでしょ? だって、私たちは」
弟「やっぱり姉ちゃんは、俺じゃなくて“お兄ちゃん”が好きなんだ…」
姉「はぁ?」
弟「だって、そうだろ…姉ちゃんは、弟の俺じゃなくて、“お兄ちゃん”役の俺が好きなだけなんだろ!?」
姉「いやいや、誰が、いつ、何時何分にそんなことを言った? 地球が何回回ったときにそんなこと言った?」
弟「…言ってない」
姉「でしょ? だって」
弟「姉ちゃんは一度も俺に、好きって言ってくれない…俺は、妹じゃなくて姉ちゃんが好きなのに」
姉「………」
弟「どうせ、今の俺は、誰かの代わりで…どっかの大人の、年上の“お兄ちゃん”みたいな人がいたらそいつと――へぶふぅっ!?」
姉「目、醒めた? まだ寝てる?」
弟「…あの、めっちゃ痛いんですけど」
姉「大丈夫、私のコブシも痛い」
弟「あのさ、姉ちゃん、殴るなら殴ると一声かけてもらうだけでも心の準」
姉「好き」
弟「備とか…さ」
姉「大好き」
姉「…“お兄ちゃん”役やってるあんたにうっかりときめいちゃったのは否定しないけど、私とバカやってる弟のあんたも、
たまに男の人に見えちゃうあんたも、手のかかる子どものままのあんたも、まるっと全部ひっくるめて好きだよ」
弟「姉ちゃん」
姉「だって、そうでしょ? あんたは私の弟で、お兄ちゃんで、好きになったひとなんだからさ」
弟「………」
姉「あんたの全部が好き。そうじゃなかったら、体あげたりしないし」
弟「俺も、姉ちゃんが好きだ…全部。うっとおしいとこも、めんどくさいとこも…全部」
姉「だから、だからね…あんたには幸せになってもらいたいっていうか……私なんかとじゃなくて」
弟「姉ちゃん」
姉「…なに?」
弟「俺のお嫁さんになってくんない?」
姉「………バカ?」
弟「…姉ちゃんに言われたくねぇ」
姉「いや、あの、姉弟って結婚できないのよ? もしかして知らなかった?」
弟「さすがに知ってるけど」
姉「だ、だったら…」
弟「姉ちゃんの夢は『お嫁さん』だろ?」
姉「え? そうだけど」
弟「そんときさ、法律上の婚姻関係とかそういうの考えて、そういう夢見るの?」
姉「そんなことないけど…ていうか、それロマンチックが逃げてくし」
弟「だったら、いいじゃん。法律上ダメでも、俺のためにメシつくって、家守って、子ども育ててよ」
姉「…それ、ジェンダーフリーなひとが聞いたら怒ると思う」
弟「姉ちゃん、働く能力ゼロじゃん? 大丈夫、俺が二人分か三人分か四人分とか稼ぐから」
姉「………子ども3人欲しい」
弟「よし、五人分稼ごう」
姉「…ホントにいいの? 苦労するよ? 不幸になるかもよ?」
弟「姉ちゃんのためなら苦労も不幸も全部俺が背負ってくから…安心して姉ちゃんは幸せになっていいよ」
姉「……バカねぇ」
弟「俺は姉ちゃんもバカだって信じてるけど?」
姉「……うん、私も…バカ」
弟「だったらさ、ずっと、バカでいよう。周りに何言われても、姉ちゃんがいれば、俺はそれでいいよ」
姉「……ふふっ…変なの」
弟「…変だよなぁ」
姉「いいわ、仕方ないから、お嫁さんになってあげる。嬉しい?」
弟「すごく」
姉「あんたが嬉しいなら、私も嬉しいかも」
弟「姉ちゃん」
姉「なに?」
弟「たまになら、お兄ちゃんって呼んでもいいよ」
姉「んー…もうお兄ちゃんはいいかな」
弟「え? いいの?」
姉「うん、だって」
――私にはもう、あなたがいるから
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